熱電変換材料焼結体にナノ構造形成で、性能が大幅に向上
産業技術総合研究所(産総研)の太田道広主任研究員らは11月26日、PbTe(鉛テルライド)※熱電変換材料の焼結体にMgTe(マグネシウム・テルライド)のナノ構造を形成することで、高い熱電性能指数ZT=1.8を実現、また同材料を用い変換効率11%を有する熱電変換モジュールの開発に成功したと発表した。
※ PbTe(鉛テルライド)
摂氏300度から700度の温度範囲で使用可能な代表的な熱電変換材料。1950年代から知られ、米国の宇宙開発などでも重要な電源として頻繁に使用されている。
石油や石炭といったエネルギー資源を輸入に依存する日本だが、エネルギーの60%以上は利用できず、熱として廃棄しているのが実態で、この未利用熱エネルギーを電力に変換して活用するには高効率な熱電変換モジュール開発が不可欠だった。
熱電変換モジュール開発で11%の変換効率を達成
これまで、熱電変換材料でZT1.0を超えること、および熱電変換モジュールでは7%の変換効率を超えることが困難だったが、今回、KANATZIDIS Mercouri G. 米ノースウェスタン大学教授とともにナノ構造の形成技術を用い、熱電変換材料の焼結体のZT値を摂氏550度で1.8まで高めることができたもの。
さらに、このMgTeナノ構造を形成したPbTe焼結体と電気的・熱的に比較的良好に接合する電極材料を開発、熱電変換モジュールでの11%の変換効率(高温側600度、低温側10度、ともに摂氏)を実現したという。
なお今後は、ナノ構造を形成した熱電変換材料と電極材料との間の電気的・熱的接合の改善に取り組み、更なる出力電力と変換効率の向上を実現するとしている。
(画像はプレスリリースより)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 ニュースリリース
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2015/