海洋温度差発電とは
海洋温度差発電は、海洋表層の温水と深海の冷水の温度差を利用した発電です。この発電は、南北緯度20度までの熱帯において、表層と深海の海水の温度差を利用して、熱媒を状態変化させ発電を行います。この発電の方式には、オープン、クローズド、ハイブリッドの3種類があります。
海洋温度差発電の仕組み
この発電の仕組みは、アンモニアや代替フロンなど沸点の低い熱媒を表層の温かい海水で気化させ、発生した蒸気でタービンを回して発電します。タービンに使用した蒸気は、深海の冷水で液体に戻し、再度気化装置に送ります。この発電の方法は、地熱を利用したバイナリー発電と同じです。
海洋温度差発電の特徴
海水の温度は、表層水も深層水も急激には変化しないため、安定した発電が可能です。この発電の導入ポテンシャルは非常に高く、NEDOの報告書によれば、沖縄では離岸距離30km以内で2797MWと推定されています。
現在の沖縄の発電設備容量は約2000MWなので、すべてを賄えるだけのエネルギーがあります。また発電に使用した深層水は、冷房や冷却土耕栽培、魚の養殖などに利用ができ、さらにレアメタル採鉱の有益性もあります。
海洋温度差発電の課題
海洋温度差発電の容器は、ほぼ真空状態で動作するため、漏れが無いよう慎重にシールする必要があります。また発電コストを下げるため、新しい低コスト材料の開発や施行技術の改良が必要です。さらに台風など波浪に対する耐久性や海洋生物の付着、大型生物の衝突などの課題もあります。
日本の取り組み
日本は、2013年6月沖縄県久米島で佐賀大学海洋エネルギー研究センターの研究チームが開発し、沖縄県が主体となり建設した「海洋温度差発電実証プラント」(出力50kW)の試験運転を開始しました。次のステップでは、商用レベルの1~2MWの発電設備を開発する計画になっています。
世界の動向
この発電の先駈けで1930年に世界初のプラントを建設したフランスは、1950年代からしばらくの間、開発を中断していました。しかしエネルギー分野のベンチャー企業Akuo Energy社は2014年、 西インド諸島のマルティニークに16MW浮体式海洋温度差発電「NERO」の建設を始めています。
アメリカは1974年、ハワイのコナコーストにあるハワイ州立自然エネルギー研究所 (NELHA)で海洋温度差発電の研究に着手しました。最近では、インド洋のイギリス領ディエゴガルシア島にあるアメリカ合衆国海軍基地向けに8MWのプラントを計画中です。
実用化に向けた導入目標
NEDO再生可能エネルギー技術白書のロードマップでは、1MWプラントの実証試験において発電コストは40~60円/kWh程度と見られています。今後実用化するにはプラント出力の大型化が必要で、2030年までに50MWの設備を開発し、発電コストが8~13円/kWh程度が開発目標になっています。