波力発電とは
波力発電は、海で自然発生する波の上下運動を利用した発電です。この発電は開発途上であり、振動水柱型、可動物体型、越波型のほか多くの種類が実験中です。
振動水柱型波力発電の仕組み
この発電には、海面に浮遊させる浮体式と、沿岸に設置する固定式があります。発電の仕組みは、装置内に空気室を設けて海面の上下動による空気の振動を、回転に変換して発電を行います。構造が簡素で、台風等の異常波浪に対して対策が採りやすく、比較的安全な形式です。
可動物体型波力発電の仕組み
可動物体型波力発電は、波の上下動を可動物体を介して油圧装置に伝え、さら回転運動に変換して発電を行います。この発電方式は、従来のタービン方式と比較して2倍以上の効率が期待できます。可動物体の種類によってジャイロ式、ポイント・アブソーバー式などがあります。
越波型波力発電の仕組み
越波型波力発電システムは、海水を海岸の貯水池等に越波させて貯め、導水溝を通して海に海水を戻す際に水車を回して発電する方式です。発電の仕組みは水力発電と同じ方式です。
波力発電のメリット
波力エネルギーは、比重の重い液体で力を伝えるため、面積当たりのエネルギーは太陽光の20~30倍、風力の5~10倍あります。また風力と比較して波の状況は予測しやすいため、発電量の見通しが付けやすいメリットがあります。
日本には多くの離島が存在しますが、離島の電力系統は本土と連系していない場合が多く、現在の発電設備は、石油が原料のディーゼル発電機が主流です。この方式は発電コストが高く、10~30MW 規模の波力発電システムが実用化されれば、代替電源として非常に有効です。
波力発電のデメリット
波力発電所の周囲は海なので、塩害による腐食や装置に海洋生物が付着する等の心配があります。さらに波浪による破損や漏電が発生する危険性もあります。海は漁業関係者のテリトリーでもあります。開発にあたっては、漁業関係者との合意が必要です。
波力発電の現状と導入目標
日本は1965年に、海上保安庁が浮体式振動水柱型装置の益田式航路標識用ブイ(最大出力30W~60W)を、世界で初めて実用化させました。現在でも国内外で数千台が稼働中です。
ところが日本の大型のプロジェクトは、2003年に終了した振動水柱型の「マイティホエール」からしばらくは行われていませんでした。しかし代替エネルギーの開発が急務となりNEDOは、2015年から空気タービン式波力発電システムを開発し、山形県酒田港の護岸にて実証試験を行っています。
現在、日本政府において波力発電の導入目標は掲げられていません。しかし海洋エネルギー資源利用推進機構(OEA-J)は2050年に向けた海洋エネルギー開発ロードマップを作成しました。それによると2020年までに51MW、2030年までに554MW、2050年までに7350MWの導入目標を掲げています。