エネルギーの現状
現在確認されている化石燃料の可採年数は、石油が53年、天然ガス56年、石炭109年と推定されています(BP統計による)。世界は再生可能エネルギーへの転換を推し進めていますが、コストとの兼ね合いもあり、さまざまな新エネルギーの発見、研究も同時に進んでいます。
微生物燃料電池とは
河川の汚染具合を表す単位でBODという単位が使われます。このBODとは生物酸素要求量のことで、汚水を細菌が処理するのに、どれだけの酸素が必要かという値です。汚水処理場でこの細菌に酸素を供給するには大変な電力が必要で、その電力量は、わが国の総電力量の0.5%に相当します。
ところが2000年頃、アメリカのニューヨーク近郊で、「シュワネラ菌」という無酸素の環境下で電極呼吸する細菌が発見されました。つまりこの細菌に汚水のような有機物をエサとして与えると、無酸素下でその有機物が分解され、電子が発生するということです。
最近日本の研究では、この細菌はシュワネラ菌でなくてもよく、それは地球いたるところに存在することが分かっています。ただ現在では電極にプラチナなどの高価な物質が使用されているためコストに難点があり、それに代わる物質の研究が進められています。
水素発電に微生物を利用
再生可能エネルギーの水素発電に、微生物を利用すると効率アップが図れることが分かってきました。現在、燃料電池の金属触媒には白金等の高価な材料が使用されてきましたが、高コストなのが実用化のネックになっていました。
今回発見されたヒドロゲナーゼは、微生物が有する酵素で水素分子の分解・合成をつかさどります。このヒドロゲナーゼを使った触媒反応は、これまでの燃料電池に比較して高効率なのがメリットで、安価な製品の開発につながると期待されています。
石油を作る藻類オーランチオキトリウムとは
ラビリンチュラ類のオーランチオキトリウムは水中の有機物を吸収して成育し、石油同様の炭化水素を高効率で生成する藻類です。これまで期待されていた緑藻類に比較し10~12倍の炭化水素が生成されます。
例えば面積1ヘクタール深さ1mの水槽で培養した場合であれば、年間約1万トンの炭化水素が作り出せます。日本の耕作放棄地は38万ヘクタールありますから、仮に約1/20の2万ヘクタールで培養すれば日本の年間石油消費量を賄えます。
合成樹脂は、主に石油を原料にして製造されます。成形が容易なので日用品から工業製品までさまざまな分野の製品に使用されています。石油の枯渇問題は、こういった製品にまで影響を与えます。オーランチオキトリウムの実用化は、こういう素材分野にまで用途を広げられる可能性を秘めています。