海の力
長い間、世界の電力を支えてきた化石燃料には可採量に限りがあることや、化石燃料の排出するCo2が地球温暖化を進める一因であることなどから、世界的に自然エネルギー利用の開発が進み、すでに自然エネルギー発電が導入されつつあるという時代に入りました。その対象には、すでによく知られるようになった太陽光、風力、水力、地熱があげられるが、視線はさらに海へと向けられている。海の力も次代の自然エネルギー発電の大きな担い手なのです。海を利用した発電方法には波力発電、潮力発電、海洋温度差発電などがあります。
波力発電
ここでは波力発電に触れてみます。波力発電は波の高低差を利用した発電方法によるものです。高低差と言えば、水の落差を作るダム利用の水力発電を思い浮かべますが、波力発電は波の運動を空気の圧力に変換し発電に導くシステムです。
波力発電は各国でベンチャー企業や、大学と企業の共同研究グループなどにより、発電事業の実現化に向けて開発が進みつつあります。波力に注目するのはそのエネルギー効率が高いからです。今は波浪情報や海現象情報さえも正確に迅速に得られるようになり、波力エネルギーの発電量予想も難しくありません。そこで、パワーある波力の起きやすい海域ならば、即、発電所の設置を、としたいところですが、そういうわけにもいかないようです。
潮力発電の問題点
潮力発電所の設置の前にはクリアしなければいけない点がいくつかあるのです。まず、発電所の維持管理、修理等のメンテナンスに掛かるコストが非常に大きい点です。波力が激しければ激しいほど発電設備の損傷はひどくなり、海水に浸かっている機器の維持管理は難しいものになります。また、何よりも自然界相手のこと、波浪情報はあくまでも予想であり、天候に左右される波には均一な波力、一定の波力は望めない。
つまり、発電量も均一、一定とはいかないということです。どうやら、波力発電所を設置するには、あるレベルの波力を持ち、季節や天候を問わずその波力に同一性があり、かつその波力は発電設備を損なうような極端な海現象のない海域を探さなければならないということです。エネルギー効率が高いという波力のメリットは魅力的ですが、それを払拭してしまうほどのデメリットが波力発電に立ちはだかっているようです。
更に、波力発電所を設け稼働することで、周囲の海洋生態への影響の可能性も問題視する声の存在です。魚や海藻類採取を生業とする漁業関係者が心配しているとも聞きます。最後に、日本の場合、波力発電は国から新エネルギーとは認められていないため波力発電研究開発プロジェクトには補助金が出ないという難点があげられます。まだまだ認知度が低いせいか、この点で研究開発着手にブレーキがかかっているのでしょうか。残念なスパイラルです。
しかし、日本は海の国です。波力のパワーがわかっているからには日本はこの豊かな海の特性を活かさない手はありません。コストの問題、漁業関係事業との問題、補助金制度の問題などクリアすべきことが山積みですが、それらを解決し得る技術や研究、再生可能エネルギーについての啓蒙活動に期待したいものです。