バイナリー発電とは
地熱発電は、発生する蒸気の量によってドライスチーム、フラッシュ、バイナリーの3種類に分けられます。このうちバイナリー発電は、発生するのが50℃から100℃の熱水しか得られない場合に利用されます。
この発電方式は、代替フロンやアンモニアなど沸点が低い熱媒を使用し、発生した熱水と熱交換をさせて蒸気をつくり、タービンを回して発電するシステムになっています。熱水と熱媒の2つのサイクルを使うことからバイナリーと呼ばれています。
バイナリー発電のメリット
高温の温泉水が噴出している温泉地では、熱すぎる温泉水は、水で冷まして使う必要があります。しかし、バイナリー発電を用いれば、1度発電に利用した温泉水を、浴用に再利用できます。また、新たにボーリングをする必要がないため、初期費用が安くつきます。
さらにこのシステムは100℃未満の工場排水や焼却施設の温水、下水処理場の廃熱を利用しても発電出来ます。この発電の特徴は、安定して発電が可能なことで、再生可能エネルギー固定価格買取制度の調達価格も、40円/kwhと高価になっています。
バイナリー発電の法的規制
2011年3月に経済産業省は電気事業法を改正し、出力が300キロワット未満のバイナリー発電施設に限り、ボイラー・タービン主任技術者選任の選任や届け出、定期検査などを不要にしました。
また環境省は、2012年3月に温泉地が多い自然公園内における規制緩和を行い、国立・国定公園内での地熱発電を可能にしました。これに伴い、バイナリー発電機メーカー各社が受注活動を本格化しています。
バイナリー発電の普及状況
世界の地熱発電設備容量のうち約3割はアメリカが占めています。ほとんどカリフォルニア州に集中していますが、この中で約2割はバイナリー発電です。2位以下にはフィリピンやインドネシアなどの島国が入っていて、日本は世界3位の資源量があるにも係わらず発電量は8位(2010年)です。
しかし規制緩和や補助金、固定価格買取制度などの助成によりコストの回収に目途が立ったことで、福島県の土湯温泉や、大分県の由布院温泉などで、温泉利用のバイナリー発電の開発が進んでいます。
導入にむけての課題
温泉バイナリー発電の導入については、源泉の湯出量や温度の精密な調査が必要です。固定買取価格制度の調達期間は15年と長期にわたってますから、途中で枯渇することのないよう十分な調査は不可欠です。
また権利関係や源泉の利用方法・利用状況の把握を踏まえた上での、温泉地にふさわしい発電システム(規模や熱媒の種類)の検討も必要です。さらに、泉質によっては配管やタービンに不純物が溜まることもあり、メンテナンスの費用も考慮しておく必要があります。