高効率で高品質なナノファイバーを生成
東京大学大学院農学生命科学研究科の磯貝明教授、フランス・グルノーブルの植物高分子研究所(CERMAV)の西山義春博士らが、高いエネルギー効率でセルロースシングルナノファイバー(CSNF)を生成する方法を発見した功績において、アジアで初めてマルクス・ヴァーレンベリ賞を受賞し、9月29日にスウェーデンのストックホルムで授賞式が行われた。
マルクス・ヴァーレンベリ賞は、森林・木材科学分野におけるノーベル賞とも呼ばれる権威ある賞。1981年に創設され、ヴァーレンベリ財団が、森林・木材科学分野、関連生物分野において独創的かつ卓越した研究成果、あるいは実用化に大きく貢献した功績を対象に表彰を行うものだ。
国産未利用針葉樹材のバイオマス資源を利用
今回の研究では、国産未利用針葉樹材から得られる木材セルロースから、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル)酸化触媒を用いた特殊な酸化反応を使用したことにより、ミクロフィブリルの表面がイオン化し、その静電反発によって水中で容易にナノ分散が可能となった。
この方法により、従来の機械的解繊方法に比べて、エネルギー消費を劇的に低減できるだけでなく、生成されたナノファイバーの均質性も向上することが実現された。
様々な分野の融合技術に応用展開が可能
また、今回の研究は、NEDOのプロジェクトとしても開発が行われており、磯貝教授ら研究チームの成果を活用して、産業分野への応用研究を行った。
CSNFの持つ結晶性と柔軟性によって、高ガスバリアフィルムの作製が可能となり、また、CSNFは強くて軽いため複合材料の強化に有効なほか、液体のレオロジー特性の改質にも寄与するなど、幅広い応用展開が可能。
その特長を活かし、増粘剤、金属担持シート、産業用バイオファイバー、化学薬品の安定剤、エレクトロデバイス、各種フィルター、抗菌・脱臭シートなどでの利用も期待されている。
また、植物バイオマス資源の活用という観点から、循環型社会・安全安心社会の構築、環境適合型産業の成長創成につながる研究といえる。
(画像はプレスリリースより)

NEDO ニュースリリース
http://www.nedo.go.jp東京大学大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻
http://psl.fp.a.u-tokyo.ac.jp/