実際の太陽光下で実験に成功
東京大学と宮崎大学の研究グループは、高効率太陽電池の電力で水を電気分解するシステムを構築し、太陽光エネルギーの24.4%を水素に蓄えることを成功したことを発表した。
これまで実践されていた光触媒を利用した太陽光水素の製造では、太陽光から水素へのエネルギー変換効率は10%未満。また、海外の研究により、太陽電池と水の電気分解装置との組み合わせで、それ以上の効率を示す成果が得られてはいたものの、すべて実験室内の模擬太陽光源によるものであった。
今回の研究では、宮崎大学の屋外試験場に設置した新型の高効率集光型太陽電池に、高分子膜を用いた水の電気分解装置を接続し、実際の太陽光下で安定的に水素を製造することに成功、世界最高効率となる24.4%を記録した。
高度な技術を結集
集光型太陽電池は、レンズなど光学系の設計や、太陽の方向にレンズを正確に向ける追尾に高度な技術を必要とし、実際の屋外環境での発電効率を向上させることは難しいことであった。
今回の実験では、住友電気工業の集光型太陽電池と、THK製の太陽追尾架台を搭載、宮崎県の日照条件で発電効率31%を記録した。
さらに、太陽電池と水の電気分解装置の直列接続数を最適化することで、31%の高効率で発電した電力をほぼ損失ゼロで電気分解装置に導入できたものだ。
さらなる効率化と低コストを目指す
この太陽電池と電気分解装置はすでに市販されており、設置条件に合わせたシステム設計により、太陽光からの水素を高効率に製造することが現在の技術で実現可能である。
また、集光型太陽電池は通常の太陽電池に比べて高価だが、海外の高照度地域では発電効率が高い分発電コストを低減でき、需要増による生産コスト減が進めば、さらに低コスト化が推進されることが期待される。
今後は、集光型太陽電池の一層の効率向上と低コスト化、日照条件に合わせて太陽電池と水の電気分解装置の接続を逐次最適化する回路の開発が必要とされ、日本のものづくり技術や摺り合わせ技術を活用して、日本の産業競争力強化につなげていきたい意向だ。
(画像はプレスリリースより)

東京大学 工学部・大学院工学系研究科
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