自然エネルギーの現在の利用状況と今後の見通し
自然エネルギーは、エネルギーの自給率を高めるだけでなく、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書等で述べられているように、地球温暖化対策の一つとして期待されているものである。そして、その効果は、多くの対策の中で最も大きい部類に入ることから、近年、関連産業が急速に拡大している。このため、自然エネルギーは、環境対策だけでなく景気対策にもなりえると考えられるので、世界各地で導入の動きが活発となっている。
自然エネルギーの利用状況
自然エネルギーは、2008年時点で全世界の最終エネルギー消費量のおよそ1割強の占有率であった。例えば、発電分野の自然エネルギーの多くが水力であり、それ以外の風力・太陽光・地熱などの割合は、全部を合わせても約3%程度と小さなものであった。しかし、世界で新設される発電所において、風力発電の占める割合は急速に増えていることから、2020年は2010年の2~5倍に達すると言われており、存在感を高めている。
そして、国際エネルギー機関 (IEA) の報告書によれば、地球温暖化やエネルギー資源の枯渇に対して何も対策を取らなかった場合、石炭と天然ガスの利用量が増え、温暖化ガスの排出量が倍以上に増加し、自然エネルギーの導入量が殆ど伸びない可能性を指摘している。一方、世界が積極的に対策を進めた場合は、2050年までにエネルギー部門からの温暖化ガスの排出量を半減すると予測している。この中で、自然エネルギーが発電量の4割近くを占める見通しを提示しており、自然エネルギーに対する期待の高さが伺える内容である。
欧州では、2020年までに一次エネルギーに占める自然エネルギーの割合を20%にする包括的な温暖化対策法案を可決している。中でもドイツは、事前の予測を上回る勢いで積極的に導入を進めており、関連産業への投資額は年間100億ユーロを超える規模に達していると言われている。現在の状況が継続すると、2050年までに電力の50%を自然エネルギーで供給するという目標は、2030年頃に達成される勢い。
一方、米国では、エネルギー省が2030年までに総需要の20%を風力発電で供給可能との見通しを示したことから、風力発電の導入が急速に進んでいる。また、太陽光発電と太陽熱発電で2025年までに電力の10%を賄える可能性が示されている。
高まる自然エネルギーの需要
以上のように、現状の自然エネルギーの使用量は、従来のものと比較してかなり少ないものである。しかし、環境や安全への配慮から今後使用量は高まっていくと考えられ、期待されているエネルギー源と言える。