取り組み状況
自然エネルギーは様々な分野で活用され、普及しているが、一事業者のみで解決できない課題も多く含まれている。このような課題解決のためには、国等の公的支援等の政策の取り組みが必要とされ、以下に日本の場合の取り組みについて記す。
日本の取り組み状況
日本の太陽光発電の年間導入量は、長年世界一を保ってきたが、近年、ドイツに抜かれる状況になっている。しかしながら、日本における自然エネルギーの普及目標は、先進各国の目標と比較すると少ないものとなっている。このようなことから、自然エネルギーの普及政策の弱さが指摘されてきており、政策の強化が課題となっている。
日本の自然エネルギー普及政策
前記の現状を踏まえて、2008年の世界経済フォーラム年次総会において、クールアース推進構想を日本が提案したことに起因して、温暖化ガスの排出量削減の動きが加速している。具体的には、2030年までに電力の半分以上を自然エネルギー等を含む再生可能エネルギーと原子力で供給する目標が示された。特に太陽光発電の導入量を40倍に引き上げ、地方におけるバイオマスエネルギーの開発を促進することが挙げられている。
この提案に基づいて、太陽光発電の普及に対応し、設備費用の一部を負担する補助金の給付が設定された。また環境省は、2030年までに補助金として累計25兆円必要だが、累計の経済効果は2020年までに29~30兆円以上、2030年までに58兆~64兆円以上になり、給付予定の補助金総額を上回ることが想定される。また2020年には60万人の雇用を生み出すと推計しており、経済効果の高まりが期待されている。
普及政策を実現する手段として、固定価格買い取り制度がある。このうち太陽光発電については、初期投資の回収年数を最小化する助成制度が実施されている。補助金の効果もあり、日本の太陽電池生産量は拡大し、2010年度は関連産業の規模が1兆円を突破し、関連雇用も、4万人を超えたと見られ、一定の経済効果を発揮したと評価されている。
また、買取制度の対象を太陽光発電以外にも拡大することにより、自然エネルギーの普及促進が期待されている。
普及政策の課題
買取条件制度は地域経済振興や産業活性化への期待が集まる一方、電力料金の増加への不満、電力会社による受け入れ拒否の可能性に対する不安の声等も聞かれる。また、これまで買取制度対象から漏れていた自然エネルギー源の事業化や、新たな市場参入、関連投資の拡大等が課題となっている。
しかしながら、2014年に沖縄電力は自然エネルギーの増加が発電設備や送電網に停電などのトラブルを引き起こすとして自然エネルギーの新規受入れの中断を発表した。また、九州電力、四国電力、北海道電力、および東北電力の4社が相次いで新規受入れ中断を発表する等、自然エネルギー事業への新規参入に対して新興電力関連企業に大きな打撃を与えており、新たな課題が挙げられている。
前述の事態を受けて経済産業省は政府が推進してきた自然エネルギー導入方針に基づく固定価格買取制度(FIT)の抜本的に見直す必要が生じている。たとえば、太陽光発電に集中している再生可能エネルギーの供給量を制限することが検討されている。いずれにしても、実効性ある普及可能な政策の実現が期待されている。