バイオマスエネルギー
近年、地球温暖化や大気汚染などの地球環境問題やエネルギー問題の観点から、再生可能エネルギーの注目が高まっている。そんな中でも、バイオマス発電を知っているだろうか。今回は“ゴミ”をエネルギーに変える画期的なバイオマス発電とその課題について考えたいと思う。
バイオマス発電とは
バイオマスとは、動物・植物由来の生物資源のことを指す。再生可能エネルギーの中で燃料をつかった発電方法はバイオマス発電だけだ。つまり燃料のコストがかかってくるということである。
実際にどうやって発電するのかというと、バイオマス発電の直接燃焼発電方式の場合、バイオマスを直接燃焼し、発生した熱を利用する。発生した蒸気でタービンを回転させることで、電力を得るのだ。もっとシンプルに説明すると、バイオマス発電は石油・石炭・天然ガスなどを用いた火力発電の燃料がバイオマス資源に置き換わったというものだ。
バイオマス発電の資源になるもの
発電資源になるものは栽培資源系と廃棄物資源系という2つに分けられる。
・栽培資源系
木材(木材チップ、木質ペレット)、サトウキビ、トウモロコシ、パーム油、海藻
・廃棄物資源系
農業廃棄物(バガス、もみ殻など)、畜産廃棄物(鶏糞、牛糞など)、林業廃棄物(間伐材、林地残材など)、産業廃棄物(黒液、食品加工残さ)、生活廃棄物(家庭からでる生ゴミ)
これらのうち、生産過程で生じるバイオマス由来の廃棄物をつかった発電方法をバオマス発電という。ちなみに、捨てる廃棄物(=ごみ)をつかった発電は廃棄物発電と呼ばれる。
またバイオマス発電にとって有価であるか否かという判断が自治体によって異なるということで、環境省は廃棄物該当性の判断事例をまとめた参考資料を作成した。
https://www.env.go.jp/recycle/report/h25-01.pdfバイオマス発電の課題
一方で、バイオマス発電には課題もある。
・燃料調達
バイオマス発電では、発電に当てた資源ごとに買取価格が定められている(固定価格買取制度)。バイオマス資源で一番調達が困難であるのは木質バイオマスだろう。未利用の木材とリサイクルの木材とでは、買取価格は2倍以上も違ってくるが、未利用の木材の入手できるのは健全な森林をつくるために間引かれた木である間伐材が考えられる。しかし間伐材は合板や製紙への有用性も高いことから、バイオマス資源への流通量はあまり期待できない。地域の森林業と提携してバイオマス発電に取り組むことが、解決の近道だろう。
・面倒な買取制度
この固定価格買取制度は、バイオマス由来の燃料で発電したものだけが対象になる。よって、家庭から出た生ゴミは対象にすることができるが、プラスチックごみは対象にならない。このため、分別は免れない。
さらに面倒なのが、燃料の出所を証明する必要があるということだ。木質バイオマスの場合、木材の出所だけでなく、チップ化したところでも証明の必要がある。この証明書がないと、未利用の木材でもリサイクルの木材として安く買い取られてしまうのだ。
・CO2排出
なぜ燃料を必要とするバイオマス発電が再生可能エネルギーとされているかというと、バイオマスの燃焼によって放出されたCO2は生物の光合成によって吸収され、ライフサイクルの中でCO2は相殺されると考えられているからなのだ。しかし、事実発電の段階で大量のCO2を排出しており、燃料を長距離運搬した際のCO2排出も見逃すことはできない。
確かに、バイオマス発電は火力や原子力発電に比べて発電のコストが高いと言われている。でも、将来の地球環境を考えれば、地域で密着してこれらの課題の解決にとりくまなければならないというのは明らかであろう。