地域の未利用材を活用
ガス関連事業を手掛けるエア・ウォーター株式会社は長野県安曇野市に木質バイオマスのエネルギーセンターを建設する。熱源に地域の未利用材を活用し、敷地内には木材チップ工場も併設する。2015年8月から建設に着手し、完成は来年3月を予定している。
「地域の悩み」を「地域の強み」に
長野県は森林の面積が全国で3番目に広く、自然林と人工林が県内の約8割を占めており、家具や伝統工芸品などさまざまな用途に利用できる豊富な森林資源を保有している。
同県を大きく悩ませているのが松くい虫による松枯れ被害だ。2014年度は同年12月時点で約6万8000立方メートルの森林が松くい虫による被害を受けており、以前から深刻な問題になっている。
今回同社がバイオマス発電所を建設する安曇野市も深刻な松くい虫の被害を受けている地域だ。松くい虫の被害拡大を未然に防ぐため、大規模な松の伐採も進んでおり、これに伴い大量に生まれる未利用材の活用が問題となっていた。
こうした地域の未利用材を木質バイオマス発電に利用できれば森林資源の有効活用につながる。
未利用材がトマトを育てる
同社は農業関連事業も展開しており、安曇野市ではトマトを栽培する菜園を運営している。今回のバイオマス発電設備の建設は、この菜園への野菜栽培用エネルギーの供給が目的。発電所から菜園に温水を供給して栽培におけるエネルギーコストの削減を図る。
さらに未利用材の燃焼過程で排出されるCO2をトマトの光合成に利用する。発電した電力は全て売電し、収益を発電設備の運営費に充てる計画だ。
同社は未利用材の活用について、安曇野市や地域の森林組合などと共同で協議会を設立して協議を重ねてきた。今回建設するバイオマス発電設備では年間2~3万トンの未利用材を利用していく計画だ。
(画像は自社 HPより)

エア・ウォーター株式会社 HP
http://www.awi.co.jp/