風力発電システムの普及拡大を目指す
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は、ロシア連邦サハ共和国政府およびルスギドロ社との間で、風力発電エネルギー分野に関する意向表明書に署名したことを発表した。
12月16日に開催された「日露ビジネス対話」において、署名式が行われ、NEDOの古川理事長、サハ共和国ボリソフ首長、ルスギドロ社シュルギノフ役員会議長兼総裁が意向表明書に署名を行った。
これにより、今後、風力発電システムの普及拡大を目指して、実証を通じて得られた情報の共有を進め、カムチャツカ地域における風力発電システムの設置に必要となる調査に着手していく。
また、サハ共和国を対象とした新たな実証事業を検討することも視野に入れ、サハ共和国政府およびルスギドロ社との間で、技術課題の特定や評価を進めるための情報交換等の協力を加速する予定である。
実証実験で燃料削減
ロシア極東地域には、約5,300もの独立電力系統が存在し、電力の多くをディーゼル発電に依存していることから、燃料輸送費のために発電コストが極めて高い状況となっている。そこで、発電コストの引き下げにつながる有望な技術として、風力発電システムが注目されてきた。
この地域での導入ポテンシャルは、2012年のロシア連邦国立極東大学付属地域エネルギーシステム研究所レポートによれば、全体で最大300メガワットに達すると試算されている。しかし、導入を進めていくためには、風力発電システムの寒冷地対策および出力変動に対する独立電力系統の安定化に関する技術の確立が不可欠だ。
こうした状況に対し、NEDOは、既に風力発電システムの実証事業を行ってきた。これは、2014年11月18日に、ロシア連邦カムチャツカ地方政府および公開株式会社ルスギドロ傘下のRAOエネルギーシステムヴォストーク社との間で基本協定書を締結し、株式会社駒井ハルテック、富士電機株式会社、三井物産株式会社を委託先として、300キロワットの風力発電機3基と系統安定化システムから構成される風力発電システムの実証事業である。
実証運転は2016年1月から10月まで行われ、その結果、風力発電システムによるディーゼル燃料の削減量は年間約400トンと試算された。
日露首脳会議での協力プラン
さらに、ロシア連邦サハ共和国には、カムチャツカ地方と同様に、独立電力系統地域が多数点在しており、導入ポテンシャルも高いと考えられている。しかし、カムチャツカ地方よりもさらに極寒の環境下にあることなどの理由から、風力発電システムを導入するためには技術開発課題の検討を進める必要がある。
そこで、2016年11月3日に開催された日露エネルギー・イニシアティブ協議会第1回会合において、風力発電の導入促進を加速していくことで一致し、2016年12月15日および16日の日露首脳会談で議論された経済分野協力プランの1つである「エネルギー開発協力」に沿った取り組みとして、今回の意向表明書の署名に至ったものだ。
(画像はプレスリリースより)

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100694.html