エネルギー変換反応を高効率化
株式会社富士通研究所は、人工光合成技術で使われる、太陽光と水との相互作用で電子と酸素を発生する明反応電極において、酸素の発生効率を従来に比べて100倍以上向上させる新しい薄膜形成プロセス技術を開発、これにより、人工光合成による貯蔵可能な生成エネルギー量の向上が期待できると発表した。
人工的に光合成を行い、水素や有機物など貯蔵可能なエネルギーを生成するためには、太陽光のエネルギーを用いて光励起材料から反応電子を効率よく取り出し、電極において、効率的に水やCO2と化学反応させることが必要であるが、これまで使用されていた半導体材料などでは、太陽光(可視光波長)の中で利用できる波長の範囲が狭いことから化学反応に十分な電流量を取り出すことが困難という課題があった。
今回の研究では、光励起材料の使用方法について工夫を行い、フレキシブル実装シート上にキャパシタなどの受動素子を形成するための電子セラミックスの成膜法(ナノパーティクルデポジション)を改良し、光励起材料の原料粉末をノズルで吹き付ける際、原料粉末を薄い板状に破砕しながら基板上に積層させる薄膜形成プロセス技術を開発した。
今回開発した技術により、光励起材料をそのまま用いる場合と比べて、太陽光の中で利用可能な光の量が2倍以上に広がり、さらに、材料と水との反応表面積を50倍以上に拡大することに成功、これにより、電子および酸素の発生効率を100倍以上に向上できることを確認した。
優れた性能を持つ薄膜形成プロセス技術
今回開発した薄膜形成プロセス技術の特徴は、まず、光励起材料の原料粉末を、成膜後に原子レベルのひずみを持つ結晶構造となるような組成にすることで、太陽光のエネルギーを吸収できる最大波長を490nmから630nmへと広げ、利用可能な光の量が2倍以上に向上したことである。
次に、形成された薄膜は、ミクロ・マクロな欠陥がないため結晶性が良く、材料中の粒子間の電子伝達特性に優れた緻密な構造となったことから、太陽光で励起された電子を効率的に電極に伝えることが可能となった。
さらに、薄膜の表面構造は、材料と水との反応表面積が大きく、材料結晶中の電子密度の高い結晶面が膜表面に規則的に形成されており、その結果、水と光の相互反応を大幅に促進させることを実現した。
富士通研究所では、今後、光励起材料とプロセス技術のさらなる改良を進め、明反応の電極の特性向上を図るとともに、二酸化炭素還元反応の暗反応部や全体システムの技術開発についても取り組み、人工光合成技術の実用化を目指していく意向を示している。
(画像はプレスリリースより)

株式会社富士通研究所
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2016/11/7-1.html