初期設備投資コストの低減
一般社団法人新エネルギー導入促進協議会(NEPC)は、小水力発電の導入・普及を促進するための取り組みの一環として、平成27年度小水力発電の導入促進に係る調査業務の成果について発表した。
水力発電は、エネルギー自給率が低い我が国において、安定的な電力供給を長期にわたり行うことが可能な電源と位置付けられており、その中でも、小水力発電事業は、未開発地点・再利用可能な開発地点での事業採算性が向上し、各種の規制緩和もあって、新規開発・既設設備更新に着手するケースが増加傾向にある。
今回の調査では、小水力発電事業の導入促進に向けて課題となっている、初期投資に占める割合が大きな設備投資コストの低減を目指し、製品についての調査・検討を行うとともに、小水力発電事業における融資等や保険に関する調査と検討を実施した。
汎用製品や海外製品の活用の可能性
まずは、汎用製品について、水車・発電機メーカーにおける汎用製品とオーダーメイド製品のラインナップ状況や生産割合、また、汎用製品を活用した場合の建設コスト削減効果等を調査し、汎用製品を活用した場合の事業採算性改善効果について検討を行った。
この結果、現在、水車・発電機は、市場が小さくメーカーへの価格競争のメリットが享受されない構造により、事業者も効率の高い製品を望んでいるため、オーダーメイド製品が主流となっている。汎用製品の適用には、まだまだ障壁はあるが、既製品化・量産化を行えば、コストダウンが図れるとともに、事業生産性の好転に導ける場合があることが確認された。
次に、海外製品の国内納入状況を調査した結果、海外メーカー、特にヨーロッパ企業は、市場における拡大成長が頭打ちとなっていることから、日本を含むアジアへの展開をにらんでおり、状況さえ整えば、日本への導入も推進されると考えられる。
また、ヨーロッパでは水車の量産化が可能なメーカーも存在しており、海外製品の活用により、小水力発電の導入が推進される可能性があるが、維持管理やメンテナンスの面において課題があることから、日本の水車メーカーや電気工事会社の技術者が、海外製品のアフターフォローができるように教育していく必要性が感じられた。
さらに、小水力発電における事業リスクと、これに対する金融機関の捉え方や、金融機関の融資検討フローを調査した。また、事業リスクに対する保険による補償を確認するために、保険商品の例や、保険料率の算定に必要な情報、保険会社が重視する事業リスク等について、ヒアリング調査をしてまとめている。
金融機関の融資判断支援や保守体制の整備など
今回の報告では、小水力発電導入促進に向けた対応の方向性について、次のように整理している。
まず、新規事業者にとって、小水力発電事業の計画段階で、目利きのできる外部機関や有識者を活用できる環境を整備することが重要であり、経済産業省が本年度から実施している再エネコンシェルジュ事業や、一部の地方自治体が設置している相談窓口がこの機能を果たしている。
小水力発電事業への融資について、専門の担当者を設置している金融機関は限られているので、金融機関の融資判断を支援する第三者認証制度や、技術面の相談窓口設置等の整備が求められ、再エネコンシェルジュ事業、環境省の地域金融機関等に対する低炭素化プロジェクトの研修等委託業務はこの機能を果たしている。
また、小水力発電事業では、事業開始前の調査や、水利権など地元関係者との調整に時間と労力を要することが、新規事業者にとっての参入障壁となっていると考えられるため、経済産業省による水力発電事業化促進事業費補助金などで対応していく。
さらに、小水力発電関係 4 団体が来年度開設を目指しているポータルサイトでは、既存小水力発電所の運転記録(トラックレコード)など、様々な情報が提供され、これは、融資を検討している金融機関や事業者にとって役に立つだけでなく、開発メーカーやメンテナンスサービス業者に対しても新たな技術開発やサービス開発のヒントとなる。
最後に、海外製品を導入した際に最も懸念されるのは、故障などの不具合により運転を停止した際のリカバリータイムであるが、代替品や補修部品の速やかな調達などにより、国内製品と比較した場合に同等、あるいは想定される影響の範囲内に抑えられことを目指すとともに、保守体制が整備されると、運転停止によるリスクが軽減されると考えられる。

一般社団法人新エネルギー導入促進協議会
http://www.nepc.or.jp/