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2025年05月07日(水)
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東京大学とNIMSら、水を用いたリチウムイオン伝導性液体を発見

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東京大学とNIMSら、水を用いたリチウムイオン伝導性液体を発見

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安全・安価・高性能のリチウムイオン蓄電池の開発へ
東京大学と物質・材料研究機構(以下、NIMS)を中心とする研究グループは、「水」をベースとした新たなカテゴリーのリチウムイオン伝導液体「常温溶融水和物 (hydrate melt、以下ハイドレートメルト)」を発見したことを発表した。

東京大学
このハイドレートメルトは、高いリチウムイオン輸送特性と高い電圧耐性を備えており、3ボルト以上で動作するリチウムイオン電池の電解液として機能する。リチウムイオン電池の電解液に使用されている有機溶媒が、不燃・無毒・安価な「水」に置き換わることで、圧倒的に安全かつ安価な新型蓄電池開発の加速が期待される。

水と特定のリチウム塩2種を混合
近年、自然エネルギーの有効利用や電気自動車の普及に基づく低炭素社会の実現に向けて、蓄電池は重要で不可欠な技術とされる。現在、最も優れた蓄電池であるリチウムイオン電池を上回る高エネルギー密度化を指向して、空気電池・硫黄電池・多価イオン電池・全固体電池などの次世代蓄電池の研究が行われているが、実用化・商品化はされていない状況だ。

一方で、自動車や家電などさまざまなモノがクラウド上に置かれインターネットを介したスマートな社会制御が行われる「モノのインターネット (IoT) 」時代の蓄電池においては、高エネルギー密度化よりもむしろ価格破壊や超生産性に加え、資源・環境・毒性・火災の4大リスクの絶対回避が現実的に必要とされており、それに資する新材料の開発が望まれてきた。

こうした現状の中で、同研究グループは、水と特定のリチウム塩2種を一定の割合で混合することで、一般的には固体となるリチウム塩二水和物が、常温で安定な液体であるハイドレートメルトとして存在することを見出した。

このハイドレートメルトは、通常1.2 ボルトの電圧で水素と酸素に分解する水を使っているにも関わらず、3 ボルト以上の高い電圧をかけても分解しない。ハイドレートメルトを電解液として応用することで、きわめて燃えやすく有毒な有機溶媒を用いた電解液でしか成し得なかった超3 ボルト級リチウムイオン電池の可逆作動に、不燃・無毒な「水」を用いた電解液で初めて成功したものである。

研究開発の社会的意義
今回の研究成果は、リチウムイオン電池をはじめとする蓄電池及びその生産プロセスに大きな変革をもたらす。

まず、不燃性の電解液となることで、電池の過充電や破砕など謝って使用された場合における甚大な爆発・火災事故のリスクを限りなく低下させることができる。また、事故等による電解液漏洩が起こったとしても、無毒な水を溶媒として使っているため、人体や環境に対する悪影響も小さい。したがって、エネルギー密度を犠牲にすることなく、格段に安全性の高い蓄電池システムを構築することが可能となる。

また、電池生産工程における厳密な禁水環境 (ドライルーム) を撤廃することができるため、生産設備を大幅に簡素化することが可能となり、リチウムイオン電池の圧倒的な低価格化も実現する。

こうして、自然界に存在する水を使った安全で安価な、高性能蓄電池デバイス設計と生産プロセス設計の双方が可能になることで、高度な安全性と低価格の両立が要求される電気自動車や家庭用の大型蓄電池開発の加速が期待される。

今後は、ハイドレートメルトが示す異常物性の起源解明と、さらなる新機能の開拓を行い、新たな学術領域としての確立を目指す。また、ハイドレートメルト電解液が可能にする新規蓄電池デバイスの実用化に向けた課題を解決し、より高機能なハイドレートメルト材料の探索を引き続き行っていくとのことだ。

(画像はプレスリリースより)


外部リンク

東京大学
http://www.t.u-tokyo.ac.jp

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)
http://www.nims.go.jp


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