PEC水分解プロセスにより、水素製造効率の世界記録更新
米国エネルギー省(DOE)の国立再生可能エネルギー研究所(NREL:National Renewable Energy Laboratory)は4月12日、光電気化学(PEC:photoelectrochemical)水分解プロセスにより、太陽光による水素の製造効率で、世界記録を更新した、と発表した。
STH効率の世界記録は、16.2%
今回達成した太陽光―水素(STH:solar-to-hydrogen)効率の世界記録は、16.2%である。今までの記録は、ドイツと米国の研究チームにより2015年に報告された14%であった。
世界記録を樹立したPECセルは、NRELが1990年代に開発したコンセプト・デバイス、ターナー(Turner)を大幅に改良したものである。
新旧のPECセルは、光分解吸収タンデム半導体のスタックを使用し、酸/水溶液(電解質)に浸漬される。ここで、水分解反応が起こり、水素ガスと酸素ガスが発生する。
両者の異なる点は、旧PECセルはガリウム砒素(GaAs)の上にガリウム・インジウム・リン(GaInP2)を成長させるのに対し、新しいPECセルは上から下へと逆に成長させる、いわゆる逆変成多接合(IMM:inverted metamorphic multijunction)デバイスである。
このIMMの進歩により、従来のGaAs層にインジウム・ガリウム・砒素(InGaAs)を置き換え、デバイスの効率を大幅に改善した。
また、新デバイスの第2のカギは、デバイスの上に非常に薄いアルミニウム・インジウム・リン(AlInP)の「窓層」を堆積し、続いて第2の薄膜層GaInP2を堆積させることであった。
2つの層は、効率を低下させる表面欠陥を排除し、半導体材料を劣化させかつPECセルの寿命を限定する腐食性電解質溶液から臨界下の層を部分的に保護する。
さらなるPECセル効率と寿命延長を目指す
商業的にPEC技術を利用するには、もっと水素製造コストを下げ、DOEの目標である水素1kgあたり2ドル以下を達成する必要がある。
NRELは、この目標を達成するために、単位面積あたりの水素生成速度を速めてセル効率を向上させ、現在の数時間の運用寿命を大幅に延長し、コストを大幅に削減する方法を積極的に追及しているという。
(画像はプレスリリースより)

National Renewable Energy Laboratory のニュースリリース
http://www.nrel.gov/news/press/2017/41792