大規模工事不要で低コスト
福岡工業大学は、同大学工学部知能機械工学科の阿比留久徳教授が、落差がない流れの緩やかな水路に低コストで設置できる「フラッター水力発電装置」に関する技術発明の特許権を取得したことを発表した。
フラッター水力発電装置とは、水中翼が流れの方向に対して左右に往復運動をすることで発電するものであり、水中翼につながった機械構造は蒸気機関車のピストンとよく似た動きで発電機を一方向に切れ目なく回転させるため、効率的に発電を行うことができる。
これまで地方の農業用水路などに設置されてきた小水力発電装置は水車式のものが多く、設置には落差が必要なため、工事にかかる費用および発電機本体の高額化や工事に伴う周辺生態系への影響、設置後の維持管理の煩雑さが課題となり、普及の妨げとなっていた。
これに対し、フラッター水力発電装置は、水中翼が流れの方向に対して左右に往復運動をすることで発電するものであり、落差が不要で低流速から発電できる。
専用導水路は基本的に不要で、大がかりな工事も伴わないため、初期投資も大幅に抑制できることや、利水にも影響がないため、地元の合意も得やすいことなどから、小水力発電の普及を推進できる技術といえる。
また、高速回転部を持たず構造がシンプルで、ごみの付着や詰まりに強く、魚やカエルといった水中生物が巻き込まれる恐れがなく、環境調和性も高いという利点もある。
地域の小規模エネルギーニーズに対応
現時点では、実用化に向けた試験機の段階であり、小型のため発電量は大きく取れず、水の流れの速さが毎秒1メートルの時に約50ワットとなっている。
しかし、原理的には大型化や、一つの水路に複数台を設置することが可能であり、水路の水深や幅、水量に応じて発電量を増やすことが可能である。
また、送電線を引くことが難しい地域でも、農業用水路があれば利水に影響なく発電ができるため、こうした地域での小規模な自然エネルギー利用のニーズ、例えば、LED外灯の点灯や災害時の非常用電源、電動農機具の夜間充電等への活用が期待されている。
同大学では、発電装置の更なる活用に向け、現在、バッテリーへの充電と放電の組み合わせを最適に制御して、電力を有効利用するための研究も行っている。
(画像はニュースリリースより)

福岡工業大学 ニュースリリース
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