宇宙太陽光発電とは
宇宙太陽光発電とは、宇宙空間で太陽光発電を行い、その電力をマイクロ波やレーザー光に変換して地上に送り、それを地上のアンテナで受けて電力に戻し利用するという発電システムのことです。
この発電システムは、1968年に米国の宇宙工学者、ピーター・グレーザー氏が提唱したのが始まりです。日本では、1998年からJAXAの前身である宇宙科学研究所が研究を始めました。2013年には内閣で決まった「宇宙基本計画」にも掲げられ、多額の予算が計上されて研究が進んでいます。
宇宙太陽光発電の仕組み
宇宙太陽光発電は、宇宙空間の静止衛星軌道上に、太陽電池パネルを設置して発電します。その電気を衛星でマイクロ波またはレーザー光に変換し地上の受信局に伝送します。地上の受信局では、そのマイクロ波またはレーザー光を電気に戻して送電系統へ送るシステムになっています。
宇宙太陽光発電のメリット
宇宙空間は、地球上とは異なり昼夜の区別がなく、天候にも左右されないので24時間発電が可能です。また周囲に大気がないので散乱や吸収などの損失がなく、光エネルギーは地上の5~10倍にもなります。
マイクロ波かそれともレーザー光か
発電した電気を地上に送るには、マイクロ波かレーザー光に変える必要があります。マイクロ波は、波長が短く電波が比較的広がらないため受信アンテナが小さくて済みます。また雲を通り抜けることができるため伝送に伴う損失がほとんどありません。
レーザー光は、波長がマイクロ波よりもさらに短いためアンテナの直径を小さくでき、建設コストの大幅な削減が期待できます。しかし雲や雨、大気や塵などによって大幅に減衰してしまうため、マイクロ波と比較してエネルギー伝送効率は悪くなります。
実用化に向けての問題
高度3万6000キロメートルも離れた静止衛星軌道から受電アンテナに伝送する場合、方向制御の精度が非常に重要です。たとえばマイクロ波の場合、東京から名古屋に設置した直径約9mの円を狙うほどの精度が要求されます。レーザー光の場合、さらに9cmの精度が必要です。
宇宙空間で太陽電池パネルを使用し、原子力発電所1基分の1GWを発電するには、そのパネルの広さは数km四方となり、重さは数万トンになります。国際宇宙ステーション(ISS)は、大きさ約108m×73mで重さは419トンですから、この発電システムはその数百倍の大きさです。
これだけ巨大な施設を宇宙空間で組み立てるには、人間の力では不可能で、組み立てロボットを開発する必要があります。また部材を運ぶためには何万回もロケットを打ち上げる必要があり、相当なコストがかかります。
宇宙太陽光発電の将来性
この研究は、インフラを使用しないで電気を送るという技術を開発しました。今年3月JAXAは、三菱電機の兵庫県にある実験施設の屋上で、55m離れた場所に、マイクロ波を使用して送電することに成功しました。この技術により、送電線を引けない所にも送電が可能となってます。