自然エネルギーの現状
太陽光発電や風力発電など自然エネルギーを活用する場合、最大のネックとなるのは発電量が一定しないことにあります。電気は需要と供給のバランスで成り立っていて、これが崩れると大停電などの危険性があります。
今のように自然エネルギーの発電量が少なければ、電気事業者側の対応でバランスが保たれますが、自然エネルギーの比率が多くなれば何らかの方法でそれを解決する必要があります。その1つがスマートグリッドと呼ばれる技術です。
スマートグリッドとは
スマートグリッドとは各家庭にHEMSやスマートメーターと呼ばれるIT機器を取り付け、消費電力や発電、蓄電池といった情報についてネットワークで情報を上手にやり取りするシステムのことです。これらの関連市場は、2020年には世界で約8兆円になると予想されています。
アメリカの取り組み
オバマ政権は、リーマン・ショックに端を発した世界的な経済不況からアメリカ経済を脱出させるため、2009年「アメリカ再生・再投資法」の中で様々な政策を示しています。その中でスマートグリッド関連には110億ドルの巨額な予算が付けられました。
またアメリカは小規模で多数の電力事業者に分かれていて、インフラの設備投資があまり行われていないため設備が老朽化し、停電等のトラブルも多く発生しています。そのためスマートグリッドの前に基本的なインフラ整備の再構築が重要で、それらの予算も多額になっています。
ヨーロッパの取り組み
EUでは2005年にスマートグリッドに関するプロジェクトを設立しました。そしてプロジェクトが始動した2006年にスマートメーターの導入を各国に要請しました。
イタリアは、スマートグリッドの開発に世界で初めて乗り出した国の1つです。現在イタリアでは、半数以上の家庭にスマートメーターが設置されています。ドイツは再生可能エネルギーの発電量が世界第3位で、電力の安定化が必要なためスマートグリッドの構築が急がれています。
またスウェーデンでは法律により、2009年から月単位でのメーター読み取りが電力会社に対して義務化され、現在ほとんどの家庭がスマートメーターに変わっています。
アジア各国の取り組み
中国の再生可能エネルギーの発電量は、アメリカに続いて第2位です。排気ガスなど温室効果ガスに大きな問題を抱える中国は、2000年代の半ばから再生可能エネルギーに力を入れてきました。スマートグリッドに対しても同様で、2013年には世界一の投資額を誇っています。
タイは電力を輸入している事情があり、スマートグリッドを用いたインフラ整備と国際基準にマッチした電力の効率的な使用に力を入れています。また他の東南アジア諸国も2010年代終わりごろには、スマートグリッドが大幅に普及していく予定です。
日本の取り組み
日本でも2010年には横浜市など4地域でスマートコミュニティの実証実験を開始しました。しかし、再生可能エネルギーの普及スピードは、固定価格買取制度が施行されてから急速に伸びており、電力の安定化からもスマートグリッドの整備が急がれます。