塩分濃度差発電とは
塩分濃度差発電は、海水と淡水の塩分濃度の差を利用して電気を作り出す発電です。この発電には、「浸透圧発電」 と 「逆電気透析発電」 の2種類があります。
浸透圧発電の原理
この発電の仕組みは、ある容器の中を膜で仕切り、片側に海水を流し、もう一方は淡水を流します。この膜に、水は透すが塩水は透さない「半透膜」を用いると、淡水が塩水側に浸透し圧力差が生じます。この圧力差を利用して水車を回し発電をおこないます。
逆電気透析発電の原理
海水を真水に換えるには、海水の両端に電極を設けて電圧をかけ、この電極の間を陽イオン交換膜と陰イオン交換膜で仕切ると膜の間から真水が取り出せます。これを電気透析と呼んでいます。逆電気透析発電はこの逆の原理で、海水と淡水を流して電気を取り出す方法です。
塩分濃度差発電のメリットと
この発電は、太陽光や風力発電のように天候に左右されず、また24時間運転可能なため、安定した電力を供給することができます。もし世界中の河口にこの発電設備を設置したと仮定すると、世界の電力消費の13パーセントに相当する2テラワットの電力が生産できます。
塩分濃度差発電のデメリット
どちらの発電方式も開発途上なため、膜など材料のコストが高く、実用化に至っていません。さらに河口の塩分濃度が変わり、生物の住環境が変化するため、モニタリングをする必要があります。
世界的な取組み
浸透圧発電の研究はノルウェーで進められており、初の試作プラントが2009年ノルウェー南東のオスロ近郊ではじまりました。このプラントの目的は、1日24時間安定した発電が可能かというものです。
また逆電気透析発電は、オランダで研究が進められています。研究がおこなわれているオランダの締切り大堤防は、ゾイデル海の一部を締切る全長30kmの堤防で、内側は淡水湖になっています。今後2020年までに200メガワットの発電所を建設する計画で、完成すればオランダ北部の30万世帯の電力を賄えます。
アメリカでは、スタンフォード大学の実証実験で、カリフォルニア州沿岸の海水と、シエラ・ネバダ山脈の湖の淡水を使い、エネルギーの74パーセントを電力として回収することに成功しました。
日本の取組み
日本では、2011年に東工大・長崎大・協和機電工業の共同研究で1~2kwの実証試験に成功しました。さらに東レ・東洋紡・山口大を加えた共同研究で商用プラントも建設されています。また逆電気透析システムは2011年日東電工(株)がオランダと共同技術開発の締結をしました。
今後の課題
一番の課題は、膜のコストが高いことです。この分野は、東レ・東洋紡・日東電工など日本の企業が技術的に進んでおり、実用化に向けて日本の責任は重大です。