太陽熱温水器の現状
太陽エネルギーの活用法として、太陽光発電が注目されていますが、太陽を利用するシステムとしては、古くから太陽熱を利用した太陽熱温水器があります。最近は、太陽光発電に関心が集まっていますが、太陽熱温水器の現状について記述します。
太陽熱温水器は、太陽の熱エネルギーを太陽集熱器に集め、水や空気等の熱媒体を暖め給湯や冷暖房などに活用するシステムに使用されています。これは、機器の構成が単純であるため、導入の歴史と実績が豊富なシステムです。以前から実用化され、戸建て住宅の屋根に設置してあるものを見かけた方もいらっしゃると思います。
太陽熱温水器の特長
太陽熱温水器の特長としては、主に以下のようなものがあります。
1,エネルギー材料費が無料
言うまでもなくエネルギー源は太陽ですから、エネルギー材料コストは永久的に無料です。また、太陽熱温水器のエネルギー変換効率は、太陽光発電より優れているという特長があります。
2,シンプルな装置
太陽熱を集めてお湯を沸かして暖房に利用するというように、システムが単純なため、装置構成がシンプルです。このため特別な知識や操作を必要としません。可動部が殆どありませんので、一度設置するとメンテナンスが不要と考えて良いと思います。また、耐久性に優れているという評価もいただいています。
3,水式と空気式の2タイプ
一般に太陽熱温水器は水を使うため、寒冷地では凍結が懸念されていますが、空気式のものも開発されています。空気式の場合は、凍結の心配がないことから、全国どこでも利用できます。
4,ソーラーウォール
集熱器の設置場所が屋根ではなく、外壁等に設置し、暖めた空気を送風機で室内に送り込むシステムが開発されています。メンテナンスも容易で耐久性に優れ、運転費用も安価なシステムであり、今後の普及が期待されています。
普及の現状と課題
太陽熱温水器は、平成9年頃に10万台以上の年間販売台数がありました。しかし、平成22年には、年間販売台数が5万台を大きく下回っており、普及に翳りが出てきたのではないかと受け止められます。この主な理由は、他のエネルギー等との競合があり、生産台数が減少傾向になっていることが大きく影響しているようです。また、前述のように装置の構造がシンプルで耐久性があるので、一度設置すると30年程度利用できることを考えると、単年度の販売台数より累積の販売台数で普及の程度を評価したほうが適切でしょう。
普及を促進するために新たな構造として、太陽熱を受けるパネル(太陽集熱器)の設置面積を小さくし、都心の小さい住宅に設置できるようにした装置が開発されています。また、太陽熱利用システムの普及促進策を行政として取り組んでいる自治体も出てきています。例えば、東京都では、太陽集熱器の設置面積を合計で20㎡以上の住宅に対して、補助金を支給する施策を実施しています。補助対象に選ばれたシステムを導入する事業者は、システムを構成する機器や設置工事費用の半額を補助金として都から受け取ることができます。ただし、補助金の上限は、システムを利用する住戸1戸当たり50万円ということですから、関心がある方は、最寄りの窓口まで問い合わせてみてください。
家庭で使われるエネルギーの約30%はお湯の利用に使われているといわれ、この給湯に自然エネルギーである太陽熱を利用することは石油資源の節約、つまりは地球温暖化の主原因といわれる二酸化炭素の排出を削減することとなり、温暖化防止に大きく貢献できるのではないでしょうか?
太陽熱温水器は、ホームセンターでも入手できる塩ビ管等を組み合わせて作ることもできますから、日曜大工の腕に覚えのある方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。