水が蒸発する、ごく当たり前の自然現象がエネルギーに
胞子に含ませた水の蒸発によって、動力あるいは電気を生み出す。
そんな、地球上で最もポピュラーな『蒸発』という自然現象を、エネルギーに変換する『蒸発主導型エンジン』『蒸発主導型発電機』の研究について、Sahin博士らコロンビア大学の研究チームが英科学雑誌『ネイチャー』に報告した。
今回製作された蒸発駆動ミニチュア車は、エンジンの壁の内側を覆う湿紙から、水が蒸発すると回転するタービンエンジンになっている。
昨年、研究チームは、湿度変化によるバチルス細菌胞子の収縮に、強い機械的な力があることを見いだし、工学的利用の大いなる可能性について、論文を報告していた。
そうした昨年の調査結果を踏まえて、こうしたナノエネルギーによって電力を供給することができる、実際のデバイスを構築したということになる。
風力タービンが1日に生み出す電気と、同様の発電が可能
構造的には、風車のようなオブジェクトのテープが肝になる。
カセットテープのような、薄い物質の両面に、胞子を特定の方法で接着させると、空気が乾燥し胞子が縮小するときテープが縮む。その引く力、また湿潤時に膨張する押す力を動力に利用するというものだ。
ケース内部には、水を蒸発させて空気多湿を作り、シャッターを開けて空気を乾燥させるというサイクルを作るが、テープの収縮に連動するように、シャッターを取り付け、運動の自動化も行うことができた。
乾燥すると自動的に閉じて、湿度が飽和すると開く、さしずめ、テープは、人工筋肉のようなものだ。
湿度の変化によって変化する、胞子の機械的な力をエネルギーに変換することに、見事成功したシステムといえるだろう。
今回はミニチュアの車や発電装置の製作であったが、蒸発エネルギーは、港や貯水池など水の上に据えるなど、スケールアップすれば、風力タービンと同等の発電が可能になるという。
実用化のためには、気温というセンシティブな動力源の、安定的なコントロール、胞子テープの耐久性向上など、クリアすべき課題はあるが、夢の再生可能エネルギーの有力な1つになりうることを、この研究は十分に示したといえる。

ネイチャー
http://www.nature.com/ScienceDaily
http://www.sciencedaily.com/コロンビア大学 sahin研究室
http://www.extremebio.org/