新しい熱電変換材料の出力因子は、従来比約2倍
東北大学大学院工学研究科宮﨑讓教授の研究グループは12月1日、NEDOプロジェクトにおいて、マンガンケイ化物系熱電変換材料を開発し、発電量を表す出力因子として、従来の約2倍に相当する2.4mW/K2mを実現した。(K2は、絶対温度の2乗。)
出力因子は、熱電変換材料の発電量を表す指標で、単位長さあたり温度差1℃で得られる電力の目安となる。
熱電変換技術は、固体のゼーベック効果を利用して排熱から直接電力に変換できる技術で、未利用熱を有効に利用できる。
マンガンケイ化物系熱電変換材料を新たに開発
東北大学研究グループは、結晶構造中のマンガン(Mn)をバナジウム(V)で1.5~3.0at%部分置換すると、モノシリサイド相の析出が抑制され、キャリア濃度が増大することを観測した。
さらに、研究グループは、結晶構造中のマンガンをバナジウムに加えて、鉄(Fe)で部分置換した試料(Mn0.93V0.03Fe0.04)Si1.7のマンガンケイ化物系熱電変換材料を開発した。
この材料の出力因子は、約530℃(800K)において2.4mW/K2mと測定され、従来の高マンガンケイ化物(MnSi1.7)より、1.6~2倍に相当する極めて高い出力因子を示した。
開発したマンガンケイ化物系熱電変換材料は、従来の鉛、テルル、アンチモン、セレン、タリウム等を用いた材料より、毒性がなく、熱的・化学的安定性に優れ、低コスト化を図ることができる材料である。
今回開発した材料はp型であり、発電モジュールを試作するため、同等な性能をもつn型の合成も取り組んでいる。
未利用熱エネルギーを電力変換するモジュール開発
今回の成果により、自動車エンジンからの排熱や産業分野における工業炉からの排熱等、300~700℃の未利用熱エネルギーを電力に変換する高出力熱電発電モジュールの開発が期待される。
(画像はプレスリリースより)

東北大学のプレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/