風力発電施設の導入と自然環境保全とを両立
環境省は、風力発電施設において海ワシ類がバードストライクを起こすことについて、各種防止策を検討し取りまとめた、実施の手引きを公表した。
風力発電設備においては、猛禽類をはじめとした鳥類が発電施設のブレードに衝突して死亡する事故(バードストライク)をはじめとする鳥類への影響、希少野生動植物の生息・生育地への深刻な影響によって、発電施設設置が妥当な自然環境であるかの適否判断が長引くこともあり、野生生物保全と風力発電推進の両立を目指すうえでの課題となっていた。
こうしたことから、環境省では、平成25年度から平成27年度までの3ヵ年をかけて、オジロワシ・オオワシという希少な海ワシ類が風力発電設備にバードストライクすることに対する防止策の検証を実施、さらに専門家による検討会を行い、「海ワシ類の風力発電施設バードストライク防止策の検討・実施の手引き」を取りまとめたものだ。
複数の防止策で効果を向上
今回の手引書では、まず、オジロワシとオオワシによるバードストライクの発生状況をまとめたデータを提示し、その発生要因について4点を挙げている。
まず第1は、モーションスミア現象と呼ばれるもので、高速で回転するブレードの先端部分が透明に見えるため認知できないということだ。第2に、海ワシ類は上方視野が見えにくく、特にエサを探している時は下方に注目しているため、上方向から下方向へ回転しているブレードに気づきにくく衝突してしまう。
第3に、悪天候による視程悪化が考えられる。これは、海ワシ類の越冬場所の1つである北海道の日本海側は、冬季には曇天が多く、地表面は雪で覆われ、また風車のブレードも白色であることから、吹雪などの発生により、風車と背景の色が一体となり、ブレードが見えにくくなるというもの。
第4は、個体同士の相互作用が挙げられる。これは、例えば後方から別の個体に追跡された場合に、前方に十分な注意を払うことができずに衝突してしまうことだ。
こうした要因をふまえ、防止策として、まずは、バードストライクのリスクが低い場所に風車を立地させること、また、風車の存在に気づきやすくするために、視認性を高めるか音を発生させること、風力発電施設の運転を制御すること、などを組み合わせて相乗的な効果を得ることが適当である。
最後に、今後の課題として、バードストライクの状況について継続的に把握し、その発生メカニズムをさらに解明していくこと、鳥類に対して影響が大きいと考えられる区域に関する情報「センシティビティマップ」を作成することなどが挙げられている。
(画像はプレスリリースより)

環境省
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